車を売る場合、査定が完了し買取額が決まってもその場で車を手放すケースは少ないです。多くの場合、乗り換える車が納車されるまでの間など実際に手放すまで、ある程度の期間乗り続けることが一般的です。

ただ車を運転する以上、ふとしたことでキズをつけてしまうリスクが常にあります。車を傷つけてしまうということ自体が非常にショックな出来事ですが、それが買取査定で売ることを決断した後となるとなおさらです。

しかし焦って損傷を隠そうと自分で修理をしてしまったりすることは禁物です。かえって価値を損ねてしまうかもしれないためです。落ち着いて冷静に自分の車の状態を確認し、適切な対処をして損を最小限に抑えていきましょう。もしかしたらあなたが思っているよりも損をしなくて済むかもしれません。

ここでは、査定が終わった後に車を傷つけてしまった場合の対処方法について解説していきます。

車の損傷度合いを確認する

ぶつけてしまった場合、まずは車の損傷の度合いを確認していきましょう。査定後にキズがついてしまうと多くの場合再度査定し直すことになります。ただ、小さなキズであれば再度査定をしても減額されずに済むかもしれません。

車のボディは下の図のように、塗装面とその下地によって紫外線や水分等外部影響から守られています。キズの深さが塗装面までで収まっており、下地まで到達していない場合だとキズの度合いとしては軽傷といえます。

塗装までのキズであればすぐにはサビる心配はなく、傷が小さければ補修用のペンで簡単な修正をすることもできます。

なお、キズの種類としては下記のようなものが該当します。

  • ひっかき傷
  • 線キズ

ひっかき傷は金属や尖ったもので擦ってしまった場合などにつきます。しかし自動車のボディの塗装は意外と頑丈なので、よほど強い力で引っ掻かない限り塗装面まで削れるようなことにはなりません。

以下のひっかき傷は明らかに目に見える状態ですが、傷の深さでいうとクリアコートにキズがついているだけなので、塗装用の研磨剤で磨けば大抵はキレイに消えます。

キズの深さを表す指標として「爪が引っ掛かるかどうか」という表現がとく使われます。爪でなぞって引っ掛かりを感じないようなら、カー用品店で売っている研磨剤で磨いて消しておけば問題ありません。

こういったレベルの傷で研磨した結果、キレイに消えた場合、あえて傷のことについて新たに申告しなくても問題ないでしょう。ただ修正した結果、少しでも目で見て確認できるようなら申告しておいた方が良いです。

買取に影響が出るキズ

買取に影響が出るキズというのは、塗装の層を超えて下地まで達している場合と、ボディ面に変形がある場合です。

これらの傷は目に見えて分かるものであり、綺麗に直すには専門技術を用いた修理が必須であるため、車の価値としては確実にマイナスであるといえます。

下記のような傷は素人が完璧に直すことは難しいため、自分で修理するということは止めておいた方が無難です。自分ではキレイに直せたと思っていても、プロから見ると分かってしまいます。例えば、以下がこれに該当します。

  • 飛び石キズ
  • ぶつけてしまい凹んだ傷
  • 擦って塗装が削れた傷

素人が下手に修理してしまった結果、さらに価値が落ちてしまうということにもなりかねません。

下記のように明らかに違う色で塗装修正をしてしまうことは逆効果になります。もしやるのであれば、きちんと必要な道具と方法を調べてから行うべきです。

これらの傷がある場合、買取業者に申告し再度査定を受ける必要がでてきます。もちろん価値はマイナスなので買取価格は下がってしまいます。価格の減額幅は損傷の度合いによって変わります。

飛び石キズの例

参考までに、どの程度の傷が買取に額何万円分に相当するのか確認してみましょう。

下記は飛び石キズの代表的な例です。飛び石によって塗装が欠けています。小さなキズですが、飛び石キズは1つでもあると減額の対象となってしまいます。

この場合2~5万円くらいは査定額が落ちます。新車から5年以内の車であれば、より影響が大きくなります。これは新車に近いほど塗装面が全体的に綺麗なことから、相対的に1つのキズに対するマイナス影響が大きくなってしまうためです。

逆に10年落ちやそれ以上に古い車の場合は、塗装全体の質が低い分、一つの小さいキズは目立ちにくいので減額の対象にならないこともあります。

飛び石キズは小さなキズですが、深さがあるため修正は意外と難しいです。下記は飛び石キズをボディ色と全く同じ塗料で修正し、研磨剤で表面を整えた自己修理後の画像です。一見きれいに見えますが、光の当たり具合ではキズの痕跡が分かります。

手間をかけて修理しても、車を引き渡した後に再度チェックされてほとんどの傷は発覚します。自分で修理をするにしても必ず買取する店には連絡するようにしましょう。

凹みキズの例

駐車場のポール等の障害物にぶつかって下記のようにボディが凹んでしまった場合、板金修理が必要になります。

塗装の場合は車屋でも修理が可能な場合がありますが、板金修理の場合は板金専門の業者でないと対応できないことが多いです。また板金修理は高い技術力が求められる作業なので工賃も高額になる傾向にあります。

このような傷を自分で修理するのはオススメしません。中途半端な技術で直すとボディ面が波打ったような見た目になり、直す前と同じかそれ以下の評価になってしまいます。

なぜ直しているのに価値が下がるのかというと、見た目として仕上がりが悪い上、キレイに元に戻すのが困難な状態になっているためです。要するに損傷したままと同様かそれ以下の評価になってしまいます。

例えば下の写真のように明らかに修正の仕上がりが悪い状態だと、ここから再度修正を加えて損傷前の状態に戻すのは余計に手間がかかるため、単純に損傷したままの場合よりも印象が悪くなります。

この傷だとフロントバンパーとフェンダー2つの部品にキズが及んでいます。特にバンパーは高額のため査定額への影響としては10万~30万円といった額になってきます。

更に、査定したとにと比べて車両コンディションの変化が大きいため買取店やディーラーが欲しいと思っていた車の条件に当てはまらなくなってしまう可能性も出てきます。

つまり店にとって「欲しくない車」になってしまうため、安く買いたたかれてしまう可能性があります。

中古車は定価が存在しないため、基本的にはあなたの車を「一番欲しいと思っている店」が一番高く買い取ってくれます。このことから損傷によって中古車としてのコンディションが変わってしまった場合には売り先を再度見直すことも考えに入れておく必要があります。

車の傷がどのくらい価格に影響するかは以下のページで詳しく紹介しています。もっと詳細に知りたい場合は確認してみてください。

車を傷つけてしまった後にやるべき行動

ここまで、車についたキズがどのくらい査定額に影響していくのかを確認しました。車を傷つけてしまったショックで誤った判断をしないよう、キズの大きさ・深さと査定への影響度合いを確認した上で落ち着いてやるべき行動をとっていきましょう。

まず傷の状況を確認した結果、損傷度合いが大きい場合はあなたが入っている自動車保険会社へ連絡し、事前に確認した傷の状態を伝えましょう。

このとき保険が適応されるとしてもあなたの独断で修理を進めないようにしてください。これは勝手に修理してしまったことが後々発覚すると買取するお店側とトラブルになる場合があるためです。

まず、あなたの保険を使って修理する場合ですが、翌年に保険料が上がってしまうため、保険料の値上がりを考慮して修理をするかどうかを判断しなくてはいけません。

年間でどのくらい上がるかは保険の等級・車種・補償内容で変わり、金額については自動車保険の担当者が教えてくれます。おおよそ3年間で5万~10万円くらいの保険料の値上がりとなります。

ここでは保険料の値上がりと査定額の減額どちらの金額が大きいかを比較します。仮に査定が10万円減額される傷を保険修理し、保険料が3年間合計で10万円値上げになると、先に払うか後で払うかの違いでしかなくなってしまいます。

細かくいえば修理している間にも車の価値は落ちるので、傷が直っても査定額は100%回復せず、直しても結果として損することになります。再査定を受ける際に「修理した場合に査定額が元に戻るのか」についても確認してから保険を使うか判断しましょう。

次に傷の原因となる相手がいて相手側の保険を使って直す場合ですが、このとき注意すべきことがあります。それは、純粋に「車を元通りにするだけの金額」を支払ってもらっただけでは、損をしてしまうことです。

なぜなら先に解説した通り修理を行って再査定を受けるまでの間にあなたの車の価値が落ちていることと、価値が落ちていなくてもキズの種類によっては修理後も査定額が元に戻らないことがあるためです。

査定額の差は「車を傷つけられたことによる損害」といえます。車を傷つける前の査定額と車を修理した後の再査定の金額を比較し、差があるようならその差額も請求しないと、最終的にはあなたがその差額分を損することになってしまいます。

下取り・買取店のお店へは隠さずに連絡する

保険会社に連絡をした後はお店に車を傷つけてしまったことを申告しましょう。前述した通り、もしあなたが保険を使って売る前に修理をすると決めている場合でも連絡が必要です。売る前の修理を行う前に必ず連絡しましょう。

保険修理をする場合、「どうせ元通りになるのだから言わなくても良いだろう」と考えるかもしれません。しかし、それは後々トラブルの元になりますので止めましょう。

素人目に見てキレイに直っていても、プロが見ると修理をしたことも分かってしまいます。また、車はボディの骨格部分を傷つけて修理すると「修理歴あり」として事故車扱いとなってしまいます。これはどんなに完璧に修理しても、その完成度にかかわらず低品質のバッジが付くようなものです。

「修理歴あり」になると、傷が完璧に直っていても中古車の価値としてはマイナスになります。このような修理をしたのを隠していたことがバレたら違約金を請求される場合があります。最悪の場合、訴えられることもあります。

バレないことを期待して、傷つけたことを隠して車を引き渡すのは非常に分が悪いギャンブルをするようなものです。ほぼ確実にバレる上に、バレた後のペナルティも大きいので絶対にやめておきましょう。

買取店の再査定を受ける

買取店に傷をつけたことを連絡をした後は、再度査定を受けることになり、ここで改めて車の損傷度合いから価値を再決定します。買い取るお店側からすれば、商品の仕入れ値を下げる理由ができたことになるため、タチの悪い店の場合はここぞとばかりに大幅な減額をしてくる可能性があります。

ここで何も知識がなければ、言われたままの金額で納得してしまうかもしれません。しかしある程度でも、キズとその修理費について知見があれば大幅な金額の下落はおかしいと気付くことができます。

例えば下記のような擦って凹みができてしまったキズだとしても、30万円も減額されたらそれはおかしいと言うことができると思います。なぜならこの車は国産コンパクトカーで部品も安く、損傷部位のパネルごと新品に交換したとしてもそこまで金額はかからないためです。

このように実際に修理しないとしても、修理にかかる金額をある程度まで知っておくと、再査定を受けたときに明らかに損するケースを防ぐことができます。

また、軽傷であれば査定額にほぼ影響が無いこともありえます。例えば派手にぶつけてしまったと思っていてもそれがドアミラーであれば、修理はミラーカバーの交換のみで済むため修理代は1万以下です。査定額への影響はそれよりも小さいといえます。

必要以上に損をしないように注意を払いつつ、再査定で今のあなたの車の価値を正しく評価してもらいましょう。

再査定結果に納得できない場合、売却先の変更を検討する

車を損傷した場合の手順として損傷した内容を確認し、買取店に報告・再査定を受けるということを解説しました。再査定を受ける際に注意するポイントとしては車の状態が変わっているため、お店側が買い取りたかった中古車の条件から外れてしまう可能性があります。

お店にとって欲しくない車として見られてしまった場合、本来の相場よりも低く見積もられてしまいます。

また再査定結果に満足できなかった場合でも、タダでキャンセルできるとは限りません。多くの場合でキャンセルは可能ですが、買い取るお店によってはキャンセル料がかかってしまう場合もあります。

なぜキャンセル料がかかるかというと、査定をして買取を決めるまでの段階で既に相応の人件費がかかってしまっているためです。

キャンセルに関してはお店ごとに規約が決まっており、車の引き渡しから「~3日まではキャンセル無料」「1週間までは無料」といったものが多いです。つまり「引き渡す前」なら無料でキャンセルできる場合が多いということです。規約がお店によって異なるため引き渡し前でもキャンセル料がかかる場合もあります。

・キャンセルのタイミングと違約金等発生のイメージ

車両引き渡し前 車両引き渡し後 車の展示・オークション出品等が完了
多くの場合無償キャンセル可能 翌日~7日後くらいまでは無償
(以降キャンセル料発生)
キャンセル料・違約金等の発生

キャンセル料があらかじめ設定されている場合、だいたい数万~10万円となります。輸入車に関してはその倍の額が設定されている店もあります。

基本的には無料でキャンセルできる期限内でキャンセルを行った方が良いです。ただ、ここまでで確認した価格の落ち幅よりも明らかに大きく減額されている場合、キャンセル料を払ってでも売り先を変えた方が良いです。

ディーラー下取り予定を買取専門店へ変更を検討する

なお査定後に車を傷つけてしまう人は買取専門店への売却よりも、ディーラー下取りを利用している人の方が割合としては多いです。これは下取り車の方が、買取店よりも査定後に車を運転する期間が長いためです。

買取専門店は車の引き渡しまでの期間が短いです。買取店は値が落ちる前に早く車を売りさばきたいため、数日~2週間ほどで早々に引き取る動きを取ります。

一方ディーラー下取りでは、新車が納車されるまで下取り車を乗り続けてもらうことを前提としているため、査定した後に一か月ほど乗り続けることも珍しくありません。

あなたがディーラー下取りを予定していた場合、キャンセルは容易です。新車ディーラーは新車の販売が目的であり、中古車を売ってもらえなくても問題ないためです。

しかし、キャンセル料はかかりませんが、新車の値引きの代わりに下取り車の買取額をアップする交渉をしている場合は、新車の購入見積もりが変わってくるので、購入費用が変わらないか確認は必要です。

また、ディーラー下取りは多くの場合買取専門店よりも買取額が低くなる傾向があります。そのため買取店に売り先を変えれば、高い値段で売れるかもしれません。

あなたの車のディーラー下取り額が仮に100万であり、傷で10万円減額された場合、それを買取店で査定してみるとそれ以上の金額がつく可能性があります。

一括査定を使って一番高く買い取ってくれるお店を再検討する

ここまで、キズによる値段の落ち幅についての知識と、査定後に傷をつけた後の対処・手順を解説しました。

車の状態が大きく変わってしまった場合、これを機にベストな売り先を再検討することで査定の減額幅を少なくできる可能性があります。

しかし、車を手放す直前であればじっくり考えて良い店を選ぶ時間は限られています。一般的な車を店に持ち込んで査定をする方法では、日中仕事があると店の営業時間内に持ち込めず次の休みまで査定ができないということもあるでしょう。

そうしたとき、限られた時間であなたの車に適した店を選ぶ方法としてネットの一括査定があります。

ネットの一括査定の特徴として短い時間でこちらの指定した時間帯と場所で査定ができるということが挙げられます。これによって店への移動時間が短縮できる上、場所に縛られないのでスピーディかつ柔軟に対応できます。

また、あなたの傷ついた状態の車に適したお店を選ぶ手助けにもなります。ネットで依頼をかける時点で、車の情報をある程度入力して査定を申し込むと、買取店から電話で連絡が来ます。そこで車の状態のヒアリングが行われ、その情報を元に買取りたいと思う店が査定に来ることになります。

買い取る意思があるということは、あなたの車の買取にある程度自信があることになるので高値で買取できる可能性が高く、あなたの車の売り先としては適しています。

まとめ

車を傷つけてしまう事はショックな出来事であり、精神的に余裕がなくなってしまいます。そういった状態では冷静な判断ができずに、損する選択肢を選んでしまったり、無用なトラブルの要因を作ったりしまうかもしれません。

まずは落ち着いてあなたの車をよく見て、傷の部位や深さ、大きさなどの損傷度合いを確認しましょう。どのようなキズなのか把握できたら、順を追って保険の確認や再査定の段取りを行っていきましょう。

特に車を大きくキズをつけてしまった場合、車両の状態が大幅に変わったことになり、それは大げさに言えば査定したときとは別の車になっているということでもあります。

車をぶつけた状態で改めていちばん高く買い取ってくれるお店に売ることができれば、損せずに車を売れる可能性が高くなります。短期間であなたの車の買取に適したお店を探すには、ネットから一括査定を依頼する方法が適しています。